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申請前チェック

補助金の見積書はなぜ2社以上求められる?相見積の実務と失敗しやすいポイント

補助金の見積書はなぜ2社以上(相見積)を求められるのか。基準額は制度ごとに違いますが、求められる理由と、仕様がバラバラで差し戻しになる失敗パターン、見積を早く出すべき理由を実務目線で解説します。

補助金の申請準備で、多くの方が最初につまずくのが見積書です。「付き合いの長い1社にお願いしたい」という相談は本当によくいただきますが、多くの制度では一定額を超える経費に複数社の見積(相見積)が求められます。今回は、製造業を20年経営されている鈴木社長との対話で、なぜ相見積が必要なのか、実務でどこがつまずきやすいかを整理します。

なぜ「いつもの1社」の見積ではダメなのか

鈴木社長(経営歴20年)池田さん、今度の設備投資、うちは長年付き合いのある業者が1社あって、そこに任せたいんですよ。見積もそこの1社でいいですよね?
池田診断士(中小企業診断士)お気持ちはよく分かります。ただ、多くの補助金では一定の金額を超える経費について、複数社からの見積、いわゆる相見積が求められます。
鈴木社長(経営歴20年)え、付き合いの深さは関係ないんですか。
池田診断士(中小企業診断士)関係ありません。ここは制度側のルールなので、信頼関係とは別の話として割り切っていただく必要があります。ただし、何社必要か、いくら以上から必要かという基準額は制度ごと・公募回ごとに違います。ここは必ず今回の公募要領で確認してください。「前に応募した時はこうだった」という記憶も、次の公募回では変わっていることがあります。
鈴木社長(経営歴20年)じゃあ、うちの規模だと相見積は避けられないと思っておいた方がいいですね。
池田診断士(中小企業診断士)その前提で準備を進めるのが安全です。1社だけで進めて、あとから「相見積が必要でした」と気づくと、時間のロスが一番痛いので。

そもそも、なぜ複数見積が求められるのか

鈴木社長(経営歴20年)そもそも、なんで国は他人の見積なんて欲しがるんですか。うちが払うお金なのに。
池田診断士(中小企業診断士)補助金は税金が原資です。「その金額が本当に妥当か」を、事業者の自己申告だけでなく、市場の相場と突き合わせて説明できる状態にしておく必要があるんです。1社だけの見積だと、その金額が高いのか適正なのか、外から検証しようがありません。
鈴木社長(経営歴20年)なるほど。うちが得するかどうかじゃなくて、税金の使い道として説明できるかどうかって話なんですね。
池田診断士(中小企業診断士)その通りです。だから相見積は「業者を疑っている」わけではなく、「経費の妥当性を示すための手続き」だと捉えていただくのが正確です。長年の付き合いのある業者さんの見積が高いと言っているわけでもありません。

相見積で実務がつまずくのはどんな時か

鈴木社長(経営歴20年)うちも一度、相見積を出したことがあるんですが、あれこれ言われて結局出し直しになったことがあって。
池田診断士(中小企業診断士)よくあるパターンです。実際にご相談でよく見るつまずきを整理すると、こういう形になります。
つまずきのパターン 何が起きるか
見積ごとに機種・仕様・数量がバラバラ 「同じ条件で比較できない」として差し戻しになる
一部の業者だけ設置費・保守費込み、他社は本体価格のみ 総額の比較ができず、審査側から仕様統一を求められる
最安値ではない見積を採用する 理由書の提出を求められることがある(制度による)
見積の有効期限が交付申請の時点で切れている 同じ業者に取り直しを依頼する二度手間が発生する
鈴木社長(経営歴20年)「同じ条件で比較できない」って、具体的にはどういうことですか。
池田診断士(中小企業診断士)実際にあったケースを一般化すると、事業者さんご自身で各社に「見積をください」とだけ依頼して、A社は最新の上位機種、B社は型落ちの廉価機種で見積を出してきた、というようなことがありました。金額だけ見ると安いB社が有利に見えますが、審査側からすると「そもそも比べている対象が違う」わけです。これでは相見積の意味をなさず、仕様を揃えて出し直すことになります。
鈴木社長(経営歴20年)それは無駄な時間を使いますね。
池田診断士(中小企業診断士)だからこそ、事業者側が「型番・数量・付帯工事の有無」まで指定した依頼書を業者に渡してから見積を取るのが確実です。業者任せで「いつも通りお願いします」だと、業者ごとの解釈で内容がずれてしまいます。
鈴木社長(経営歴20年)最安値じゃない方を選ぶ場合の理由書、というのも初めて聞きました。
池田診断士(中小企業診断士)制度によりますが、あり得る話です。価格だけで選ばない合理的な理由(納期、保守体制、実績など)を説明できるようにしておく、という考え方です。ここも公募要領・交付規程の確認が前提になります。

見積はいつ依頼すればいいのか

鈴木社長(経営歴20年)じゃあ、見積はいつ頃から動けばいいんでしょう。うちは許認可の関係で仕様が最後まで固まらない部分もあって。
池田診断士(中小企業診断士)見積の作成自体、業者側で数週間かかることが珍しくありません。相見積で複数社に依頼すればさらに時間がかかります。仕様が全部固まってから動き出すと、公募の締切に間に合わなくなるご相談を実際にお受けすることがあります。
鈴木社長(経営歴20年)うちみたいに、一部の仕様が後から確定するケースはどうすれば。
池田診断士(中小企業診断士)「先に固まっている部分」と「あとで確定する部分」を分けて、固まっている部分から先に見積依頼を出すのが実務的です。あとで仕様が変わりそうな部分は、業者にもその旨を伝えた上で、確定した段階で再見積を取ればいい。全部が揃うのを待ってから動き出すよりずっと早く準備が進みます。
鈴木社長(経営歴20年)ただ、見積を取っただけで安心して、そのまま発注しちゃいそうな気もします。
池田診断士(中小企業診断士)そこは絶対に注意してください。見積・仕様確定までは進めても、発注・契約・支払いは交付決定より前にしないことです。ここは以前フライング着工の記事でもお伝えした、補助金でいちばん多い落とし穴です。見積書はあくまで「確認のための書類」で、「発注していい合図」ではありません。
鈴木社長(経営歴20年)見積と発注は別物だと。肝に銘じます。

見積書チェックリスト:ここだけは揃えておく

池田診断士(中小企業診断士)最後に、見積を依頼する前に確認しておきたいポイントをまとめておきます。
  1. 仕様の統一 — 型番・数量・付帯工事の有無を業者間で揃えて依頼する
  2. 見積の有効期限 — 交付申請の時点で切れていないか確認する
  3. 宛名・発行日 — 申請者名(屋号だけでなく、個人事業主はフルネームまで)と発行日が入っているか
  4. 相見積の要否・基準額 — 「前回はこうだった」ではなく今回の公募要領で確認する
  5. 発注のタイミング — 見積が揃っても、発注・契約・支払いは交付決定後まで待つ
鈴木社長(経営歴20年)これ、うちの経理と業者にもそのまま見せられそうですね。
池田診断士(中小企業診断士)ぜひそうしてください。見積の段階でつまずく方は本当に多いので、ここを丁寧にやるだけで審査までの通りが良くなります。相見積の基準額や必要書類は制度ごとに違うので、対象になりそうな制度は検索ページで公募要領を確認しながら、締切から逆算して余裕のあるスケジュールで見積依頼を始めてください。制度選びや進め方に迷ったら、ご相談もお気軽にどうぞ。

※ 本記事は一般的な実務解説です。相見積の要否・基準額・必要書類は制度・公募回により異なります。申請の際は必ず最新の公募要領(原本)をご確認ください。

※ 聞き手(田中さん=創業準備中・佐藤さん=開業1年目・鈴木社長=経営歴20年)は、読者のみなさまの疑問を代弁する架空のキャラクターです。回答はすべて運営者・池田哲郎(中小企業診断士)本人によるものです。

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この記事を書いた人

池田哲郎(中小企業診断士・池田計画合同会社)。山梨県を拠点に、補助金申請支援・事業計画づくりを本業とする現役の実務家。プロフィール →

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